僕は手帳が書けない人です。
これまでも何度か手帳を買い、そのたびに失敗してきました。
世間でよくある理由のように、書き始めても続かないのです。
というか僕はそもそもメモが書けない人なのです。
どうやってメモを書けばいいのか、メモとは何を書くことなのか、がわかりません。
そして、メモを書くことと手帳を書くことは、少なくとも僕からすればとてもよく似ています。
だから、メモが書ける人、手帳が書ける人には、昔から憧れを持っているのです。
そんな僕はある年、手帳を書いてみようと思い立ったのでした。
特に書くことがあったわけではなく、「手帳を書く」っていいよなー、っていう漠然とした雰囲気からのことでした。
手帳を選ぶにあたっては、なんせ初めてのことだしメモがさっぱり書けないという不安もあったので、高めの手帳には手を出さずに100円ショップで買った簡素な手帳でデビューしてみることにしました。
ところが。
実際に1日の予定を書いてみると、それが全然実行できないのです。
一昨日も全然予定が進まなかった。昨日もできなかった。今日もそうだった。
きっと、明日もだめなのだろう。
日に日に、精神がマイナスへと向かって行くのです。
僕は書くのをやめました。早かったですね、やめたのは。
こういう経験があったのだからもうやめりゃいいのに、僕はその年の年末にまた新しい手帳を買ったのでした。
今度は100円ショップの手帳ではなく、「県民手帳」と呼ばれるものでした。県内の行事やら市町村についての情報やらが、カラー写真とともに紹介されています。
とてもきれいな手帳でした。手帳というよりガイドブックのようでした。
僕は、こんなきれいなものを「文字を書き込む」という行為で汚してしまうことができませんでした。
その県民手帳は、見るだけで終わりました。
その後、手帳を買わない年が何年かあったのですが。
ある手帳が、僕の気を狂わせてしまったのです。
そう、「ほぼ日手帳」です。
これまでにない画期的かつ工夫が凝らされた手帳。
これなら、これなら僕でも大丈夫なはずだ。
僕は張り切って最も大きいサイズの「カズン」を買いました。
そして書くことにも工夫しました。
予定を書いたらそれができなかったときにダメージを負ってしまう。
だからその日にあったことを書こう。
スケジュール帳からライフログへの方向転換でした。
だめでした。
うまくいきませんでした。
僕は競馬が好きで、土日の競馬が終わった後に感想を書いていました。
そして、本当はそこに馬のイラストも描きたいと思っていました。
ところが。
裏写りがひどい。
ペンによってはそんなことはないのだろうけれど、僕が使っていたコピックでは無理だったのです。
そのため別の紙に描いてから貼るということをしていたのですが、何回もそれをやっていると手帳のその部分だけ盛り上がってしまい、段差ができてしまったのです。
それがめちゃくちゃ書きづらい。
3ヶ月くらいで、投げ出してしまいました。
それに、カズンを埋められるほど書くことがなかったのも、一因としてありました。
ならばと次の年に買ったのが、「ジブン手帳」。
中でも、1日がバーチカル、見開きで月~日の1週間分となっている「Biz」を買いました。同じ仕様の「Standard」にしなかったのは、それに付いてくる「LIFE」「IDEA」は不要と考えたからです。
つまり、ほぼ日カズンと比べて、かなり削ぎ落としたということです。
そして、書くことは完全にライフログ。
僕はもともと、その日一日を振り返っても何をしていたのか覚えていない、今日の何時に何をやっていたかを思い出そうとしても全然出てこない、ということがよくありました。だからその都度記録していけばいい、何をやっていたのかわからないなんてことはなくなるはずだ、と思ったのです。
ところが。
手帳に書く時には、もうすでに忘れているのです。
その時間に何をやっていたかを書こうとしても、もう覚えていない。
そもそも、その都度手帳に書くのだということを忘れてしまっているのです。それでもある瞬間に突然「ああそうだった手帳に書くんだった」と思い出して書こうとするのですが、もう手遅れ。
そうやってできた空白を見ると、日々マイナスが積もっていった手帳初年度の僕が思い出されてしまいます。
それはあまりにも悲しいので、空白を埋めるように「忘れた」という単語を書いてみたものの、それは手帳の空白を物理的に埋めるだけであって僕の心の穴を埋めることはできませんでした。
この年も、手帳は続きませんでした。
それでも、手帳が書ける人になりたいという憧れを捨てきれず、また翌年もジブン手帳Bizに手を出しました。
まあだめですよね。自分の中で何かが改善されたんじゃないんだから。
2年目のこの年のほうが、全然書けませんでした。
もう金輪際手帳に手を出すのはやめよう。
そう誓いつつも、毎年時期が来れば必ず手帳売場に足が向いてしまいます。
それでも、売場の手帳を手に取って開いてみても、それをレジまで持って行くことはありませんでした。
手帳を買わないということに、僕は成功していたのです。
それなのに。
それなのに。
どうしてだろう。
あんなに毎年、手帳を買わずにやり過ごしていられたのに。
10月も11月も12月も買わずに、無事に年を越せたのに。
2月も28日どころか29日になった今日、買いたくなってしまった。
そして、買ってしまった。
2月29日に、3月始まりの手帳を見つけてしまったのが、運の尽きだったのかもしれない。
ということで、これからは無印良品の手帳を使うことになりました。
今年はちゃんと書けるのだろうか。
それとも今年もやはり書けないのだろうか。
どんなに無理だろうと思っていても、買った日くらいは「今年こそは書ける」って思いたいですね。